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muji . 2005.03 .
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. 山下洋輔の"文字化け日記"
イラストレーション:火取ユーゴ
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極月悪日。隣の謎の帝国のテレビ・アナウンサーが、確信をもってデタラメを言い張るのは感動的だ。これに対し日本の外務省は、電話連絡をしているが相手が出てこないなどと最低馬鹿のんきなことを言っているが、そんな場合か。こういう時こそこちらも公営放送を善用して、テレビ演説で一発かましてやれ。
 「嘘八百を並べ国民をあざむく某国の腐れ権力亡者どもに告ぐ。貴様らの命運は尽きた。我々は閣議決定により以下のことを決定した。すなわち、ゴルゴ13を5名、矢吹貴を3名、特別制裁の使命を帯びて、権力の豚どものもとに送り込む計画が予算と共に決定された。豚どもの余命はわずかである。5キロ四方見通しのよい場所に5万人の護衛を配置して潜もうと、ある日豚の額には、特別仕様アーマライトF36クロムモリブデン銃身カラシニコフチーフスペシャルトリガーから発射された弾丸が穴をうがつであろう。それを恐れて地下要塞の底に潜もうとしても無益である。356人の喜び組の女を寝返らせた矢吹貴が、痴態を繰り広げる豚のベッドの脇に拷問道具と共に出現するのは時間の問題であるからだ。豚に告ぐ。命が助かりたければ今すぐ、膝を屈し、首を差し出し、なけなしのオイキムチとジンロも差し出して降服せよ!!」
 これを朝鮮征伐の神功皇后の衣装で白石加代子さんに公営放送の特別番組で 24時間ぶっ続けにやってもらいたい。至芸のオドロオドロしい発声に、豚どもはたちまち気絶するにちがいない。他の女性アナウンサーなら安藤優子さん本命で小宮悦子さん対抗、大穴に鷹西美佳さんを推薦する。

本月懐日。念願の「ジャズマン忠臣蔵」ついに挙行。作曲山下洋輔・編曲指揮松本治・構成字幕作成筒井康隆。第一楽章・松の廊下。「ジャズマン忠臣蔵 口上 山下洋輔」の字幕のもとソロピアノで始める。本来忠臣蔵には口上はないが構わずこういう構成にする。筒井さんに教わった口上の音程で「トザイ、トーザイ、そこもとお目にかけまするは、歌舞伎十八番より仮名手本忠臣蔵にございます。演じまするは、古今無双のジャズ達人、打ち揃いましてシャバダバドバラダ」などと、いい加減なことを思いつくままのココロで、ブルースフレーズになったり義太夫三味線になったりして言い終わる。すると全員楽器を鳴らしながらの登城。梅津和時(as)〜池田篤(as)〜川嶋哲郎(ts,fl)〜片山広明(ts)〜青木タイセイ(tb ,笛、el-b)〜木幡光邦(tp)〜エリック宮城(tp)〜吉野弘志(bs)〜堀越彰(ds)〜松本治(tb)の順で字幕の名前に合わせて自己紹介フレーズを吹く。やがて「メインテーマ」から「ストーミー・ウェザーによる荒れ模様の城中」、「ジャンピング・アット・松の廊下」となり、梅津吉良と片山浅野が吹き比べをする。やがて吉良が切られて「刃傷」と字幕が出たところで、客席から思わぬ大拍手が起きた。演奏中断となり二人を紹介する。この後もいわゆる名場面ごとに拍手で中断という鑑賞態度が出現した。これは新体験で、どこか日本人の芸能史的共有財産に手を触れたような根の深いものを感じた。

第二楽章・切腹。「バイバイ・ブルースによる内匠頭切腹の場」ではそのままFのブルースになって全員のソロを披露。「辞世の和歌」は57577リズムを利用したセッション。「メインテーマとグッドバイによる家臣の悲しみ」では閉幕寸前のピアノソロで一瞬腕を振りあげて思いとどまるアクションをした。平岡正明曰く「あそこが、<おのおの方・・・>のところだな」。

第三楽章・一力茶屋。「フライト・フォー・ツーによるお軽と勘平の道行き」でヴァイオリン の金子飛鳥が登場してピアノとデュオ。その後、「ダンシング・イン・ザ・ダークによる目隠し鬼」になり、tsのyukarieが、「カルメンのような衣装で」と新聞で評された姿で登場。舞台には香水の匂いが立ちこめる。女性二人による「舞妓二人による松の廊下の回想」があり、「アワ・ダンス、五人囃子によるどんちゃん騒ぎ」では阿波踊りのリズムで全員演奏しながら舞台で踊った。

第四楽章・討ち入りは、「コラージュによる回想」のあと川嶋哲郎(fl)ソロによる「俵星玄蕃」。川嶋君、床に正座して吹いたり、吹きながらの退場の時もどこか歌舞伎風の所作という熱演。やがて全員がドラムの堀越彰とやりあう「アサルティング・ブルーによる討ち入り」となる。入り乱れる音の中、呼ぶ子が鳴って吉良が発見され、梅津クラリネットによる「吉良上野介の命乞い」やがて「勝鬨」となる。直後にベースソロがあり「寺坂吉右衛門」と出るがこれはあまり理解されなかった。四十七人の中でここで一人だけ離脱する者がいるのだ。やがて「マーチ・オブ・ドーンによる凱旋行進」で客席乱入。フィナーレで出演者と筒井さんを紹介。バイバイ・ブルースでのアンコールではエリック宮城の超高音がますます冴え渡り、高らかに終幕を告げた。こうやって思い出すとすぐまたやりたくなる。癖になったらしい。こうなったら春夏秋冬常打ちジャズマン忠臣蔵をやりたいので、誰か芝居小屋を買ってくれ。



「CDジャーナル」2005年3月号掲載
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